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東京高等裁判所 昭和33年(ラ)787号 決定

〔解説〕家事審判に対する即時抗告の起算日については、家事審判規則第一七条が「即時抗告の期間は………審判の告知を受けた日から、これを起算する」と規定しているところから、この「………日から起算する」というのは初日算入の計算方法を表わす用語であると解し(註1)、この場合は「法令に別段の定めがある場合」に該当するので、期間計算に関する民法の一般原則(同法一四〇条)に対する例外として、審判の告知を受けた日を初日として算入すべきであるとの説(註2)と、この「………日から起算する」というのは、単に期間の起算点の基準を定めたにとどまるものであり、起算点の初日を算入するかどうかは事柄の性質上初日を算入するのを相当と解する場合のほかは、民法の一般原則によるべきであるとの見解(註3)のもとに、即時抗告は不利益な裁判を受けた者の救済に関する事項であるから、審判の告知を受けた日を初日として算入すべきでないとする説(註4)とにわかれていることは周知のところである。本決定は前説を踏襲したものとみられるが、後説に従えば本件の即時抗告期間の末日は昭和三三年一二月七日で日曜日に当るから、その翌日になされた本件即時抗告の申立は、民法一四二条により適法と解せられたであろう。

註 1 大審院大一一・四・一〇決定民集一巻一八二頁

憲法一〇〇条、年令計算に関する法律参照

2 東高昭三一・六・四決定月報八巻九号四五頁

3 昭三二・三・七法曹会決議法曹七八号八三頁

行政事件訴訟特例法逐条研究二〇回ジユリスト八六号七三頁

4 東高昭三一・八・二四決定下民集七巻八号二二八〇頁

昭三二・七・一八家庭局長私かん回答

昭三二・九・一八大阪管内有志協議会月報九巻九号一八七頁

抗告人 鈴木一

主文

本件抗告を却下する。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は別紙の通りであり、当裁判所の判断は次の通りである。

本件記録添付の抗告人の法定代理人渡辺ミイに対する郵便送達報告書によると、原裁判所は、本件審判を告知するのに、審判書謄本を送達する方法によつたものであるところ、審判書謄本が抗告人の法定代理人渡辺ミイに送達されたのは昭和三三年一一月二三日であり、また、本件抗告状に押捺された受付印によれば本件抗告は、抗告状を当高等裁判所に提出してなされたのであるところ、その提出の日は、右同年一二月八日であることが認められる。

ところで、家事審判法第七条により、特別の定めがある場合を除いて家事審判に準用される非訟事件手続法第一八条第二項の規定に照し、家事審判の告知を審判書謄本の送達によつてこれをすることはもとより適法である。そして、家事審判法第一四条は家事審判に対する即時抗告の期間を二週間とする旨、家事審判規則第一七条は即時抗告の期間は、即時抗告をすることのできる者が審判の告知を受けたときは、告知を受けた日から起算する旨それぞれ規定している。しかるに本件においては、抗告人が審判の告知を受けたのは、昭和三三年一一月二三日であり抗告の申立をしたのは同年一二月八日であること前記認定の通りであるから、本件即時抗告は、期間経過後になされた不適法なものであることは明らかである。

よつて本件即時抗告はこれを却下すべきものと認め、主文の通り決定する。

(裁判長裁判官 内田護文 裁判官 鈴木禎次郎 裁判官 入山実)

(別紙) 抗告の理由

原裁判所は法定代理人渡辺ミイの資力収入が申立人(抗告人鈴木一枝)を養育するに充分でないものがあるので相手方(鈴木鉄夫)はその不足を補う責任を認め乍ら月二千円の扶養料を定めた事は事実の認定を誤つて居る次第である。又相手方(鈴木鉄夫)の収入を年額五十五万円を挙げて居ると云う事実の調査は真実に合致して居らないので尚調査を詳細に遂げる必要があり実際は百万円以上挙げて居るのである。

以上の点から金二千円の扶養料を認定したことは審理不尽の点があり不当なので抗告する次第であります。

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